- 続いてPLUについて。(赤字は渡辺氏の文章)
- PLUは、人口8万人以上の都市でそれぞれの都市が策定を義務付けられた都市計画で、水及び森林資源の保全等を含む将来の土地利用のマスタープランである。 策定責任者はCUSの代表者で、関連自治体の全首長が参加して策定され、そこで方向性が確認されると自治体の職員で具体的内容を作成する。
なお、このマスタープランは単なる土地利用の区分を行うだけでなく、
- それぞれの地区が抱えるまちづくりの課題の抽出や持続可能性からみたまちづくりの方向性の明確化、
- まちづくりの方向性を担保するために必要となる拘束力のある規制内容の明示、
- まちづくりとして土地利用を行っていく上での原則 の明示についても併せて示される。
PLUの策定の目的は、目標年次においてストラスブール市及びその周辺をどのような地域にしていきたいのかを明確にして、将来のまちの姿、グランドデッサンを全ての人にお知らせするための文書を作成することである。
まちづくりにおいては、CUSは次の3点を基本哲学・ビジョンとして掲げている。
- ライン川を中心として魅力的で影響力を持つ欧州都市としてストラスブールを繁栄させていく
- 移動が簡単で職住が近接したコンパクトなまちづくり
- 持続可能な発展が望めるまちづくり
現在は2030年をターゲットとして、まちづくり計画をどのように行っていくかという全体の方向性が決まったので、これに拘束性のある規則など法律的な部分を練っているところであるそうだ。(現在事前協議中で、2014年に公的審査を、2015年後半に議会承認を予定しているので大変な長丁場である。)
フランスのまちづくりでは単なる土地利用のゾーニングが決められるだけでなく建物の階数、細かいところでは壁の色、窓枠の欄干の位置なども決められ、都市の景観調和の役割も果たしている。最終的には、都市整備の方向性とプログラム内容まで定められることになる。
日本でも非常に詳細な都市計画プランは立案されている。ストラスブール市でヒヤリングを受けて個人的に感銘を受けたのは、フランスの場合ゾーニングと建築規制が徹底しているという点で、そこから景観美の整った各自治体の特徴あるまちづくりが展開されていることが分かる。拙著「ストラスブールのまちづくり」でも詳しく紹介したが、建蔽率、容積率だけでなく、緑地率、高さ規制、壁や屋根などの外観の色規定など細かく自治体ごとに規制されており、家屋の塀にまで外観との調和が求められている。勿論宣伝広告に至るまで厳しい規制があるので、日本のように色がまちまちの看板も、許可された一部のエリアを別にしてまず目にすることはない。
なお、ストラスブールの郊外では人口2000人から5000人程の小 さいけれども独自の特色を持って活気のある自治体が多いとの紹介があった。しかし、日本の限界集落と同様にこの集落の中には農地、自然地としての保全や居住 だけの都市計画では村落を維持していくことが難しい村もある。フランスでは歴史的に一つ一つの首長が大きな発言力を持っており、過去に市町村合併を進めよ うとしたが全く進まなかった経緯がある。こうした背景から拠点の集約化は難しいため、郊外の集落については、通常の住居空間地区とは違った、例えば工業団 地の誘致を図るなどの具体的な方策を含めて特別な計画について現在検討をしている。村落を守るためには集落地域の学校を守ることが一番の課題となってい る。
また、法律の国というフランス。法的にも細部までPLU策定を図らないと、議会で反対派から揚げ足を取られ、PLU承認 が遅れる自治体もあるそうだ。だから、PLU策定は都市計画のエンジニアだけでなく、法律家なども加わっての共同作業であり、まさに「組織の中の横軸の連 携が必要とされている。」という説明があった。
人間的ファクターでは、個人的には以下の点に注意を惹かれた。
- こういったマスタープランを作成しているエンジニアたちが、市役所のスタッフであること(コンサルタントはあくまでもプラン作成の基礎となる調査などを請け負う。)
- 担当員たちは比較的年齢が若く、そして「環境先進都市といわれるストラスブール市のまちづくりにかかわれることを非常に名誉に思っているし、このまちで住めるのが楽しい」という素直な物言い。
- 外国人である我々に、問題点や解決しなければならない課題はは隠さずはっきりと提示すること。などに新鮮な驚きを感じた。
きっと同じようにして、20年前の都市交通計画も立案されてきたのだろうと彷彿させる行政スタッフたちの姿であった。
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